~現場の声が、私たちの教材を育ててくれました~

概要

これまで私たちは、介護福祉士国家試験に合格した外国人介護職員の学習体験、専門学校での教育現場、そして外国人教育に取り組む介護施設へのインタビューを、シリーズを通してご紹介してきました。

一人ひとりの背景も、施設ごとの課題も、決して同じではありません。それでも、お話を伺うたびに、そこに共通する一つの言葉が浮かび上がってきました。

「教育こそが人を育てる」

シンプルでありながら、介護という仕事の本質を突いた考え方です。技術は教えられても、姿勢や思いやりは日々の積み重ねでしか育たない。だからこそ、教材を提供する私たちにも、その積み重ねに寄り添う責任があると感じています。

では、この「動画でOJT介護」は、そもそもどのような思いから生まれたのでしょうか。

今回は少し視点を変え、私たちNAIが動画教材を作り続ける理由、そしてこれから目指していく介護教育のかたちについて、じっくりお話ししたいと思います。

すべては、一人の理事長からの相談が始まりでした

「動画でOJT介護」が誕生するきっかけは、2018年12月頃にさかのぼります。

社会福祉法人一燈会 理事長が、日本経済新聞神奈川版に掲載された「外国人技能実習生向け研修動画」の記事をご覧になり、「来日するミャンマー人技能実習生のために、介護動画を作れないだろうか」と声を掛けてくださったことが始まりでした。

当時、一燈会様では外国人技能実習生を迎える準備を進めていました。書類の整備や住まいの用意など、受け入れ体制は着々と整っていく一方で、どうしても解決しきれない課題がありました。

「日本の介護を、言葉と文化の違いを超えて、どう伝えればよいのか。」

介護は、教科書だけでは学べない仕事です。声のかけ方、手の添え方、目線の高さ、間の取り方。そのすべてに意味があり、そのすべてが利用者様の尊厳と直結しています。だからこそ、通り一遍の説明では足りない。しかし現場は多忙で、一人ひとりに時間をかけて手取り足取り教える余裕もない。多くの施設が抱える、共通のジレンマでした。

そこで一燈会様は施設を開放してくださり、介護現場で実際に行われているケアを一つひとつ確認しながら、シナリオの作成、介護技術の監修、撮影まで、多くの職員の皆様にご協力いただきました。

私たちにとっても、それは初めての本格的な介護教育動画づくりでした。カメラを回しながら、「この動作の意図は何ですか」「なぜこの順番なのですか」と何度も伺い、時には撮り直し、時には夜遅くまで議論を重ねた日々を、今でも鮮明に覚えています。

「ここまで作るのか」その一言が、私たちの原点です

完成後、一燈会理事長からいただいた言葉は、今でも忘れることができません。

「正直に言うと、ここまで期待していたわけではありません。
これまで数多くの研修動画を見てきましたが、現場で本当に使える教材は多くありませんでした。
しかし完成した動画は、その予想をはるかに超える内容でした。
動作一つひとつが丁寧で、本質的な介護の考え方まで伝わる教材になっていました。」

厳しい現場を長年見てこられた方からのこの言葉は、私たちの背筋を伸ばしてくれる、大きな励みとなりました。

さらに、実際に学んだ外国人技能実習生からも、

「ここまで分かりやすい教材は初めてです。」

という声が寄せられました。母国語でも介護は難しいのに、慣れない日本の文化と言葉のなかで学ぶ彼らにとって、「分かる」という実感は、何よりの自信につながります。

そして理事長は、こんな評価もしてくださいました。

「介護福祉士国家試験の土台を築く教材としても、高い完成度だと思います。」

日々のOJTのために作った教材が、将来のキャリア形成にもつながる。この一言は、私たちに「教材が果たせる役割の広さ」を教えてくれました。目の前の一日を支える教材が、数年後のその人の人生も支える可能性がある。だからこそ、一本一本を妥協せずに作り続けなければならない――そう心に刻んだ瞬間でした。

私たちが作っているのは「動画」ではありません

これまで多くの施設や教育機関へお話を伺ってきました。

国家試験に合格した外国人介護職員。専門学校の先生。外国人教育に取り組む施設長。立場も背景も異なる方々ですが、皆様のお話に共通していたのは、「教育は一度教えて終わるものではない」という考え方でした。

動画を見ることが目的ではありません。

動画で理解し、現場で実践し、振り返り、また学ぶ。

この循環のなかで、人はゆっくりと、しかし確実に成長していきます。逆に言えば、どれほど優れた教材でも、「見て終わり」になってしまえば、その価値は半分も発揮されません。教材はあくまで、学びのサイクルを回すための一部品なのです。

だから私たちは、「動画を販売している会社」ではなく、「教育環境をつくる会社」でありたいと考えています。教材の納品がゴールではなく、施設の教育文化そのものを支えるパートナーでありたい。この視点こそが、NAIがぶれずに歩んできた軸です。

「基礎教材」という言葉だけでは伝えきれないもの

私たちの教材について、「基礎教材ですね」と言われることがあります。

もちろん、その評価は間違っていません。技能実習生や特定技能人材が最初に触れる教材として、基礎を丁寧に押さえていることは、私たちが誇りにしている点でもあります。

しかし、その言葉だけでは十分に伝わらないことがあります。

動画でOJT介護は、手順だけを説明する教材ではありません。

なぜその介助が必要なのか。
なぜその声掛けをするのか。
なぜその順番なのか。

介護は「手順の暗記」ではなく、「利用者様の状態に合わせた判断」の連続です。だからこそ、私たちは「なぜ」を言語化することにこだわり続けています。医学・看護・介護、それぞれの専門的な視点から内容を確認し、実際の介護現場で活用できるよう検証を重ねながら制作しています。

さらに、多言語版についても、単なる翻訳ではありません。

専門用語が正しく伝わるか。
その国の介護職員が違和感なく理解できる表現になっているか。
介護現場で誤解が生じないか。

たとえば「見守り」「寄り添う」といった日本語は、直訳しても本来の意味合いが伝わりにくい言葉です。文化的な背景を踏まえ、ネイティブ監修を重ね、一つひとつ確認しながら制作しています。

「伝わること」

それが私たちの一番大切にしていることです。伝わらなければ、どれほど正しい内容でも、現場では機能しないからです。

現場が求めるものは、これからも変わり続けます

介護現場は常に変化しています。

外国人介護人材はさらに増え、日本語能力や経験も一人ひとり異なります。ミャンマー、インドネシア、ベトナム、フィリピン、ネパール――出身国が多様化するなかで、「日本語版だけ」「英語版だけ」では対応しきれない場面が確実に増えています。

だからこそ、教材も変わり続けなければなりません。

現在は、多言語字幕に加え、ミャンマー語音声版をリリースしました。字幕を追うのが難しい学習初期の職員でも、母国語の音声があれば内容がすっと頭に入ってきます。現在はインドネシア語音声版の制作も進めています。

また、施設長や教育担当者が、日常の連絡事項や施設独自のルールを、自身のアバターを通じて多言語で伝えられる仕組みについても取り組みを進めています。全国どの施設にも共通する「基礎」の部分は動画教材で、施設固有のルールや文化はアバターで――そんな役割分担ができれば、教育担当者の負担は大きく軽減されるはずです。

現場からいただいた声が、新しいサービスを生み出しています。私たちは今後も、机上で企画するのではなく、現場と対話しながら次の一歩を決めていきたいと考えています。

私たちが目指しているのは、介護教育を支えることです

私たちは、すべての施設に正解があるとは思っていません。

施設の規模も違えば、人員体制も違います。教育にかけられる時間も予算も異なります。都市部と地方でも、直面する課題は大きく変わります。

だからこそ、「この教材さえあれば大丈夫」と言うつもりもありません。教材は万能薬ではなく、あくまで教育を支える道具の一つです。

しかし、一つだけ確信していることがあります。

教育を後回しにして、良い介護は育ちません。

外国人だから、日本人だからではなく、人を育てることに近道はありません。手間をかけ、時間をかけ、失敗も含めて共に歩んでいく。その過程そのものが「教育」なのだと、これまで出会ってきた現場が教えてくれました。

これまで出会ってきた施設や教育機関は、利益だけではなく、「人を育てること」を大切にしていました。忙しい業務の合間を縫って新人と向き合う職員の姿、母国を離れて挑戦する外国人職員を家族のように迎え入れる施設長の姿。そうした現場の温度こそが、この業界の希望だと感じています。

私たちも、その思いに少しでも応えられる存在でありたいと考えています。

まだ道半ばです。

それでも、現場の声を聞き、教材を改善し、新しい学び方を考え続けること。

それが、私たちNAIの役割だと思っています。

動画でOJT介護は、完成した教材ではありません。

現場と共に育ち続ける教材でありたい。

それが、私たちの変わらない願いです。

▼動画でOJT介護の詳細は
https://bsp.nai.co.jp/