~介護福祉士国家試験に合格した二人が教えてくれたこと~
概要
外国人介護人材の採用は、今や多くの介護施設にとって欠かせない選択肢となりました。技能実習、特定技能、EPA、在留資格「介護」など、受け入れの制度も多様化し、ミャンマー、インドネシア、ベトナム、フィリピンなど、さまざまな国から意欲ある人材が日本の介護現場に加わっています。
一方で、「採用した後、どう育てるのか」という課題に明確な答えを持つ施設は、決して多くありません。日本語の壁、文化の違い、専門知識の習得──向き合うべきテーマは想像以上に幅広く、現場任せになってしまうケースも見受けられます。
今回ご紹介するのは、当社の 「動画でOJT介護」 を学習教材の一つとして活用し、介護福祉士国家試験に合格したミャンマー人とインドネシア人介護職員 の学習体験です。
この体験談から見えてきたのは、「動画があったから合格した」という単純な話ではありません。本人の努力、施設の支援、そして学び続けられる環境がそろった時、人は大きく成長できる という事実でした。
外国人介護人材が「育つ施設」と「育ちにくい施設」。その違いは何でしょうか。
外国人介護人材を受け入れる施設は年々増えています。厚生労働省の統計を見ても、介護分野における外国人労働者の数は右肩上がりで推移しており、地方の中小施設でも珍しくない光景になりました。
当初から教育プログラムや研修制度を整え、計画的に育成している施設もあります。日本語学習の時間を勤務時間内に確保したり、資格取得を後押しする奨励金を設けたりと、法人としての「育てる覚悟」が仕組みに表れている施設です。
一方で、慢性的な人手不足の中、「何から始めればよいのかわからない」「新しい教育システムを導入する余裕がない」「担当者が兼任で手一杯」と悩みながら、現状維持を続けている施設も少なくありません。結果として、外国人職員が孤立してしまったり、数年で離職してしまったりというケースも、残念ながら耳にします。
もちろん、補助金制度を活用することも大切です。特定技能協議会や自治体独自の助成金など、活用できる制度は年々広がっています。しかし、本当に重要なのは、採用することそのものではなく、その人が数年後も介護の仕事に誇りを持ち、成長し続けられる環境をつくること ではないでしょうか。
外国人介護人材の能力や日本語力には、当然ながら個人差があります。今後、受け入れがさらに進めば、その差はより大きくなるでしょう。N2レベルで来日する人もいれば、N4からスタートする人もいる。介護の学校を卒業してきた人もいれば、まったくの未経験者もいる。
だからこそ必要なのは、「教える人の頑張り」だけに頼る教育ではなく、誰もが自分のペースで、繰り返し学べる教育環境 です。特定の先輩職員のスキルや熱意に依存した教育は、その人が異動・退職した瞬間に途絶えてしまいます。組織として続けられる仕組みこそが、施設全体の底力になるのです。
合格した二人に共通していた学習方法
今回、介護福祉士国家試験に合格したミャンマー人とインドネシア人のお二人には、それぞれ異なる学習スタイルがありました。学習時間の使い方も、得意な分野も、母国語も、日本語のレベルも違いました。
しかし、はっきりと共通していたことがありました。
それは、「分かるまで、何度でも学ぶ」 という姿勢です。
ミャンマー人職員の学習体験
ミャンマー人職員は、日本語能力は比較的高かったものの、介護特有の専門用語や難しい漢字には苦労しました。「褥瘡(じょくそう)」「嚥下(えんげ)」「拘縮(こうしゅく)」といった言葉は、日常会話では出てこないため、教科書を開いても意味が頭に入ってきません。
「動画でOJT介護」はすべての漢字にルビが付いているため、分からない言葉はルビを頼りに自分で辞書を引き、意味を確認しながら理解できるまで何度も動画を視聴したそうです。
夜勤の空き時間や施設内の研修時間 も活用し、休日は実務者研修へ通い、その予習・復習にも同じ内容の動画を繰り返し視聴していました。「一度で理解できなくても、動画なら何度でも巻き戻せる。先輩に何度も聞くのは申し訳ないけれど、動画なら遠慮なく繰り返せる」──そう話してくれた表情が印象的でした。
インドネシア人職員の学習体験
一方、インドネシア人職員は、N4レベルで来日し、約1年でN3まで日本語力を伸ばしました。 決して平坦な道のりではなかったそうです。
日本語の勉強は非常に難しかったそうですが、彼女は自分なりの学習ステップを見つけました。まず母国語(インドネシア語)字幕で介護技術の内容を理解し、その後、日本語(ルビ付き)動画を視聴する という二段階の学習法です。
こうすることで、介護知識と日本語を同時に学ぶことができ、内容を理解した状態で日本語を耳にするため、専門用語の音と意味が自然に結びついていったといいます。
「日本語音声を聞きながら、発音も覚えられました。」
「アニメ座学編は、ストーリー仕立てなので難しい内容でも理解しやすかったです。」
特に 感染症、認知症、高齢者虐待の定義 などは、学校の講義よりもむしろ動画のほうが印象に残ったと話してくださいました。抽象的な概念も、映像とストーリーを通して見ることで、記憶に定着しやすかったのでしょう。
合格を支えたのは、「動画」だけではありません。
ここで、誤解していただきたくないことがあります。
「動画だけで合格できた」わけではない ということです。
合格の背景には、いくつもの要素が重なっていました。
- 休日を惜しまず勉強に充てる、本人の努力
- 分からないことを自分で調べ続ける、粘り強い姿勢
- 実務者研修に前向きに通い、学び続ける意欲
- そして何より、施設が動画を見る時間を積極的に確保し、学びを応援してくれたこと
- 同僚や先輩職員が、日本語の質問に丁寧に答えてくれたこと
- 「あなたなら合格できる」と信じ、声をかけ続けた上司の存在
こうした一つひとつが重なり、合格という結果につながったのだと思います。学習教材は、あくまでその一部を支える存在にすぎません。それでも、私たちは自分たちの動画がその学びを支える教材として役立てたことを、大変うれしく思っています。
実際に、今回受験した5名のうち3名が合格し、あと1名もわずかな点差 という結果でした。もちろん数字だけですべてを語ることはできませんが、「正しい教育環境は人を成長させる」という可能性を、あらためて強く感じています。
これからの外国人介護教育に必要なこと
今後、外国人介護人材はさらに増えていくでしょう。2040年に向けて、日本の介護需要はさらに拡大し、外国人材への期待もますます高まっていきます。
しかし、全員が高い志を持ち、日本語能力も十分というわけではありません。むしろ、多様なバックグラウンドを持つ人材が増えるほど、教育のあり方も柔軟に変えていく必要があります。
だからこそ必要なのは、「できる人だけが成長する教育」ではなく、「誰もが学び続けられる教育」 です。
- 日本の介護技術
- 安全な介助方法
- 利用者への声かけと接遇
- 認知症ケアの基本姿勢
- 日本独自の介護文化や価値観
これらを繰り返し、分かりやすく、しかも自分のペースで学べる環境が、施設にとっても、外国人職員にとっても大きな力になるはずです。教育は「一度教えて終わり」ではなく、「いつでも戻ってこられる場所」であるべきだと、私たちは考えています。
私たちが目指しているのは、「学び続けられる環境」です。
私たちはこれまで、多言語字幕付き動画 を通して、日本人職員と同じ教材を外国人職員にも届けたいという思いで教材づくりを続けてきました。「外国人向けの簡易版」ではなく、「同じ内容を、それぞれの言語で理解できる」ことにこだわってきました。
そして今回、新たな取り組みとして、ミャンマー語字幕に加え、ミャンマー語音声版をリリース しました。
字幕を目で追いながらの学習は集中力を要します。特に、実技動画では手元の動きに目を向けたい場面も多くあります。母国語音声があれば、耳から自然に情報を吸収でき、映像そのものにより集中できるようになります。
今後は インドネシア語をはじめ、ベトナム語やネパール語など、他言語への展開 も順次進めていく予定です。
私たちが提供したいのは、単なる動画ではありません。外国人介護人材が自信を持って学び、日本人職員と同じ目線で介護を実践できる教育環境 そのものです。
介護の未来を支えるのは、人です。
その人を育てるのは、教育です。
そして教育とは、一度教えて終わるものではなく、「学び続けられる環境」をつくること。
今回、合格を勝ち取った二人の姿は、そのことをはっきりと教えてくれました。彼らの努力と、それを支えた施設の温かい環境。この二つが交わったとき、外国人介護人材は確かに大きく成長します。
私たちも、その道のりに寄り添う教材づくりを、これからも続けてまいります。
動画でOJT介護の説明はこちらから
https://bsp.nai.co.jp/


