~教育現場から見えた「介護教育」の未来~

概要

介護人材不足が深刻化する中、多くの専門学校や大学では外国人留学生を受け入れながら介護福祉士を育成しています。日本国内の少子高齢化はさらに加速しており、介護を担う人材の確保は、もはや一つの業界を超えて社会全体の課題となっています。

しかし、日本人向けに構築されてきた教育を、多様な国籍や日本語能力を持つ学生にそのまま当てはめることは簡単ではありません。理解する力も、学ぶスピードも、これまでの学習経験も、一人ひとり違います。教室に集まる学生たちの背景がここまで多様化した今、教育のあり方そのものが問い直されています。

そのような教育現場で、「動画でOJT介護」を長年活用してくださっている専門学校があります。

今回のインタビューで印象的だったのは、「動画が良い」という評価ではありませんでした。教育とは何か。教えるとは何か。そして、これから外国人介護人材を育てる学校や施設には何が求められるのか。その答えが、教育現場の先生方の言葉の中にありました。

「教える」ことより、「育てる」ことが教育の本当の目的

学校の先生が最初に話してくださった言葉が、とても印象的でした。

「介護教育は資格を取ることがゴールではありません。卒業後も社会で活躍し続けられる人材を育てることが、本当の教育だと考えています。」

介護教育というと、どうしても国家試験や資格取得へ目が向きがちです。もちろん資格は大切です。合格率という数字は、学校の評価にも直結する重要な指標です。

しかし現場では、それだけでは通用しません。利用者やご家族との関わり。職員同士のコミュニケーション。困った時に自分で考え、相談し、解決していく力。突発的な事態への冷静な対応。学校が育てたいのは、そのような力を持った介護人材でした。

この考え方は、介護施設の新人教育にも通じるものではないでしょうか。資格を持っていることと、現場で活躍できることは、必ずしもイコールではないのです。

外国人留学生が増えた今、教育の方法そのものが変わり始めている

現在、多くの介護福祉士養成校では外国人留学生が学んでいます。国籍も、日本語能力も、学習経験も様々です。母国で看護や介護の経験を持つ学生もいれば、日本語学校を卒業して初めて介護分野に触れる学生もいます。

同じ授業を受けても、一度で理解できる学生もいれば、何度も繰り返し学習しなければ理解できない学生もいます。これは能力の差ではなく、言語や文化、これまでの学習経験の違いによるものです。

従来のように、「先生が教え、学生がノートを取る。」そんな教育だけでは限界があると先生方は感じていました。板書のスピードに追いつけない学生、専門用語をメモしきれない学生、質問したいけれど日本語で表現できない学生――多様な学生を一つの教室に集めた瞬間、これまでの常識が通用しなくなっていたのです。

そこで着目したのが、オンデマンドで何度でも学べる動画教材でした。理解できなければ止める。もう一度見る。分からない用語は辞書で調べる。自分のペースで学ぶ。

教育とは、全員を同じスピードで進ませることではなく、一人ひとりが理解できる環境をつくること。その考え方が、とても印象に残りました。

「動画でOJT介護」と出会った理由

学校でも、介護に関する教材は必要だと考えていました。しかし、介護教材を一から制作することは簡単ではありません。医学的な内容。介護技術。専門用語。介護過程。認知症。感染症。これらをすべて教育教材として制作するには、膨大な時間と専門知識、そして映像制作のノウハウが必要になります。

そんな時に出会ったのが、「動画でOJT介護」 でした。

当初は、介護福祉学科へ入学した学生の補助教材として利用し、自主学習につながればという期待がありました。しかし実際には、自主的に学習を続ける学生は想像より少なかったそうです。「見ておいてください」と伝えるだけでは、学生は動かない。これは教育現場でよくある課題です。

ここで先生方は考え方を変えました。「入学してから学ぶ」のではなく、「入学する前から学ぶ」。合格した学生へアカウントを付与し、入学前教育として動画を視聴してもらう取り組みを始めたのです。

この発想の転換が、教育現場に大きな変化をもたらしました。

入学前教育が変えたもの

教員の先生方からは、次のような声が上がるようになりました。

  • 「授業の理解が早くなった。」
  • 「追試になる学生が減った。」
  • 「専門用語への抵抗感が少なくなった。」
  • 「質問の質が変わった。」

もちろん、すべてが動画教材だけの成果とは言えません。教員の努力もあります。学生自身の頑張りもあります。しかし、「介護という分野を事前に知っている」というだけで、授業の理解度が変わることは確かだったそうです。

そして何より印象的だったのは、動画が「答えを教える教材」ではなく、「授業を理解する準備教材」として機能していたことでした。予習で全体像をつかんでから授業に臨むことで、学生の頭の中に受け皿ができている。だから先生の言葉がすっと入ってくる。この構造は、施設で新人教育を行う場合にも、大きなヒントになるのではないでしょうか。

「基礎教材」という言葉だけでは伝わらない価値

今回のインタビューで、学校の先生が何度も話されていたことがあります。それは、「動画でOJT介護は、導入部分の教材として非常に優れている。」ということでした。

この言葉だけを見ると、「国家試験対策には物足りない教材なのかな。」と思われる方もいるかもしれません。しかし、実際にお話を伺うと、その意味はまったく違いました。

学校は国家試験だけを目標に教育しているわけではありません。介護福祉士として社会に出た後も、長く活躍できる人材を育てることが教育の目的です。そのためには、高度な知識を学ぶ前に、介護の考え方や専門用語、介護技術の基本、安全な介助方法などをしっかり理解していることが欠かせません。

つまり先生方が評価してくださったのは、「基礎」ではなく、介護教育の土台を築く教材 としての価値でした。

「基礎だから簡単」ではありません。

介護教育では、「基礎」という言葉が誤解されることがあります。「基礎だけなら、初任者研修レベルで十分ではないか。」「簡単な内容なら、新たな教材は必要ない。」そのような考え方もあるかもしれません。

しかし、今回インタビューを通して改めて感じたことがあります。建物は、どれほど立派でも土台が弱ければ長く支えることはできません。介護教育も同じです。

  • 認知症を理解する。
  • 感染症の仕組みを知る。
  • 介護過程を理解する。
  • 利用者への適切な声掛けを身に付ける。
  • 介護技術の意味を理解する。

こうした内容は、一見すると「基礎」に見えるかもしれません。しかし実際には、介護福祉士として成長し続けるための最も重要な土台です。この土台がぐらついていると、その上にどれだけ高度な知識を積み重ねても、現場で応用することができないのです。

学校の先生方が評価してくださったのも、この「土台づくり」の部分でした。

実際に現場で起きた変化

導入から数年が経ち、学校ではさまざまな変化が現れました。一年生全体の成績が向上したこと。学期末試験の追試対象者が大きく減少したこと。授業中に発言する学生が増えたこと。

学生アンケートでは、

  • 「認知症が理解しやすかった。」
  • 「コミュニケーションが分かりやすかった。」
  • 「障害の理解が深まった。」

という声が多く寄せられました。

また、学生が最も多く学習していた時間は、一回あたり三十分から一時間程度。長時間勉強するというより、短い時間でも継続して学ぶ習慣が身に付いていました。通学の合間、アルバイト前の待ち時間、寝る前のひとときなど、学生たちは自分の生活リズムに合わせて動画を視聴しているようです。

学校では現在も、希望する学生へアカウントを付与し、自主学習教材として活用されています。

学校の先生の言葉が、私たちの励みになりました。

今回、最も印象に残った言葉があります。

「テキストを読んで確認問題を解く従来型の学習方法と比べると、この動画教材は理解という面で二〜三倍の効果を生み出す可能性があると感じています。」

私たちにとって、この言葉は大きな励みになりました。

動画だから良い。そういうことではありません。理解しやすいから、自分で考えられる。考えられるから、応用できる。その積み重ねが、介護技術につながる。先生方は、そのように評価してくださいました。

私たちが目指しているもの

「動画でOJT介護」は、もともと介護施設で働く職員の研修教材として制作を始めました。医学的な内容。介護技術。専門用語。利用者への声掛け。これら一つひとつを、介護現場の施設長や教育担当者、専門職の監修を受けながら積み上げてきました。

その結果、施設だけでなく、専門学校でも活用していただける教材になりました。私たちは、このことをとてもありがたく感じています。

一方で、学校の先生がおっしゃったように、専門教育や国家試験対策までを一つの教材だけで完結できるとは考えていません。だからこそ私たちは、「すべてを教える教材」ではなく、「その後の学びを支える土台となる教材」 を目指しています。

そして現在は、その土台をさらに強くするため、多言語字幕だけでなく、母国語音声付き教材の制作も進めています。日本語能力には個人差があります。しかし、目指すゴールは同じです。日本人も外国人も、同じ介護を学び、同じ基準で利用者に向き合えること。そのために、私たちはこれからも「学び続けられる環境」をつくり続けたいと考えています。

教育は、未来への投資です。

学校の先生は最後に、こんなことを話してくださいました。

「外国人教育の教材として、本当に優れた教材だと思います。もっと多くの教育現場で活用されても良いのではないでしょうか。」

その一方で、「他校にも広まると、自分たちの学校の特色が薄くなるので少し複雑な気持ちもあります。」と笑顔で話してくださいました。

この言葉には、私たちが何よりもうれしく感じた「教育現場からの信頼」が込められていました。

介護教育に近道はありません。しかし、理解しやすい教材があり、繰り返し学べる環境があり、それを支える教員や教育担当者がいる。その積み重ねが、介護現場で長く活躍できる人材を育てていくのだと思います。

私たちは、これからも教育現場と介護現場の声を大切にしながら、「介護を学ぶすべての人」の力になれる教材づくりを続けてまいります。


動画でOJT介護の説明はこちら
https://bsp.nai.co.jp/