令和8年熊本地震を受け、命を守る「計画」と「教育」の在り方を改めて考えます。
令和8年7月28日に発生した熊本地震。
まずは、このたびの地震でお亡くなりになられた方々に、心より哀悼の意を表し、ご家族に対して心からお悔やみ申し上げます。また、すべての被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
今もなお余震が続き、被害の全容も明らかになっていない中、多くの方が不安な日々を過ごされていることと思います。
ニュース映像を見ながら、私は一つのことを考えていました。
介護施設のBCP(業務継続計画)は、本当に現場で機能する計画になっているのだろうか。
例えば、深夜2時。
突然、大きな揺れが施設を襲います。
停電。
非常ベル。
利用者の居室から聞こえる不安そうな声。
認知症の利用者は突然の出来事に混乱し、「部屋へ戻る」と避難を拒みます。
ベッド上で生活されている利用者は、自力では避難できません。
酸素療法を受けている利用者もいます。
そして職員自身も被災者です。
家族の安否が気になりながらも、まず守らなければならないのは目の前の利用者です。
そのような状況の中で、外国人職員へ次々と指示が飛びます。
「非常電源を確認してください。」
「避難誘導をお願いします。」
「利用者を優先してください。」
「余震に注意してください。」
「津波情報を確認してください。」
緊迫した状況の中で、その言葉の意味を正確に理解し、迷うことなく行動へ移すことができるでしょうか。
日本人職員であっても、災害時には冷静な判断が難しくなります。
まして、日本語や日本の災害文化にまだ十分慣れていない外国人職員にとっては、なおさら大きな不安があるはずです。
厚生労働省では、介護施設における業務継続計画(BCP)の策定を義務化し、自然災害や感染症への対応について、研修資料や作成支援ツールを公開しています。
多くの介護施設でも、BCPの策定や訓練、研修が実施されていることでしょう。
しかし、今回の地震を受けて改めて感じたことがあります。
BCPは「作成すること」が目的ではありません。
本当の目的は、災害が発生したその瞬間に、一人ひとりが迷わず行動できることです。
どこへ避難するのか。
誰が誰を支援するのか。
誰が情報を収集するのか。
誰が医療機関へ連絡するのか。
その計画が職員全員の中で共有され、理解され、実際に行動へ移せて初めてBCPは機能します。
近年、介護現場では外国人介護職員の活躍が当たり前になりました。
日本の介護を支える大切な仲間です。
だからこそ、BCPも日本人職員だけを前提に考える時代ではありません。
避難経路を理解しているだろうか。
災害時に使われる専門用語を理解しているだろうか。
非常時の役割を理解しているだろうか。
利用者への声掛けをどのように行えばよいのか分かっているだろうか。
こうした内容は、マニュアルを配布するだけでは身に付きません。
繰り返し学び、繰り返し確認し、実際に訓練を重ねることで初めて身に付きます。
つまり、BCPは計画だけではなく、「教育」があって初めて機能するものなのです。
災害は、いつ、どこで起こるか分かりません。
日本に暮らす以上、「自分たちの地域は大丈夫」と言い切れる場所はありません。
だからこそ、平常時から備えることが何よりも重要です。
そして、その備えとは非常食や備蓄品だけではありません。
職員一人ひとりが同じ理解を持ち、同じ行動ができるようにすること。
それが最も大切な備えではないでしょうか。
介護施設には、新人職員もいます。
ベテラン職員もいます。
外国人職員もいます。
経験や国籍、言語が違っても、災害時には全員が利用者の命を守るチームになります。
だからこそ、「誰かが知っている」ではなく、「誰もが理解している」状態をつくることが重要です。
今回の熊本地震は、多くの方に改めて災害への備えを考えさせる出来事となりました。
阪神・淡路大震災の高速道路崩落の教訓をいかし、桁が大きくうごいても落下しない「落橋防止装置(落橋防止構造)や衝撃をしなやかに逃がす耐震補強が全国の高速道路で進められ、今回の熊本地震でも崩落せず、大惨事になるのを防ぎました。
被害をゼロにすることはできなくても、最小限にすることはできるはずです。
私たちも例外ではありません。
施設の方向性や教育、研修に間違いがなかったとより対応を強化する施設。また、新たな視点からBCPを見直す施設もあるはずです。
避難訓練を改めて実施する施設もあるでしょう。
それは決して「義務だから」ではありません。
利用者の命を守るためです。
そして、職員自身の命を守るためでもあります。
私たちはこれまで、介護技術だけでなく、法定研修や自然災害・感染症・事業継続計画(BCP)に関する教育教材も制作してきました。
しかし今回の熊本地震を受け、改めて感じたことがあります。
教材を制作することが目的ではありません。
本当に大切なのは、その学びが災害時の冷静な判断につながり、一人でも多くの利用者、そして職員の命を守る行動につながることです。
私たちはこれからも現場の声に耳を傾けながら、「本当に現場で役立つ教育とは何か」を問い続け、介護に携わるすべての人の学びを支えていきたいと考えています。





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