~外国人介護人材の調査から見えてきた、本当に必要なこと~

概要

前回は、厚生労働省の調査をもとに、外国人介護職員が日々どのような悩みを抱えながら働いているのかをご紹介しました。

そこから見えてきたのは、「日本語が難しい」という問題ではなく、「どう学べばよいかわからない」という教育環境の課題でした。

では、外国人介護人材を受け入れている介護施設は、どのような課題を抱えているのでしょうか。

受け入れる側の視点に立ったとき、また違った現実が見えてきます。

公益社団法人 全国老人福祉施設協議会が公表した「令和6年度 外国人介護人材受入れ実態調査報告書」からは、多くの施設が教育や人材育成について真剣に取り組みながらも、さまざまな悩みを抱えている現実が見えてきます。

そして、この調査を読み進めるうちに、私たちは一つのことに気付きました。

それは、外国人介護人材だけの問題ではなく、日本の介護教育全体に共通する課題が見えてきたということです。

今回は、施設側の視点から見えてきた課題と、これからの介護教育に求められる「仕組みづくり」について考えてみたいと思います。

外国人介護人材の受け入れは、ゴールではありません

近年、多くの介護施設が外国人介護人材を受け入れています。

慢性的な人手不足が続く中、外国人介護人材は介護現場を支える大切な存在となっています。

特定技能、技能実習、EPA、在留資格「介護」など、制度も多様化し、施設の選択肢は広がってきました。

しかし、受け入れたことがゴールではありません。

そこから始まるのが「育成」です。

日本語指導、介護技術の習得、日本の介護文化への理解、国家試験対策、そして生活面のサポート。

やるべきことは山積みです。

調査報告書からも、各施設が教育方法や国家試験対策、日本語教育、職場への定着など、多くの課題に向き合っていることが読み取れます。

これは決して一部の施設だけの話ではありません。

大規模施設も、小規模施設も、都市部の施設も、地方の施設も。

多くの介護施設が同じ悩みを抱えながら、日々試行錯誤を続けています。

受け入れの制度は整いつつありますが、その先の「育て方」については、まだ現場任せになっている部分が大きいのが実情です。

本当に足りないのは、人ではなく「教える仕組み」ではないでしょうか

介護現場では、「教育が大切である」ということを知らない人はいません。

問題は、「教育したくない」のではなく、「教育する余裕がない」という現実です。

教育担当者も介護職員です。

利用者へのケアを行いながら、新人指導や記録業務、家族対応など、多くの業務を抱えています。

シフトに入って現場を回しながら、空いた時間で新人に説明をする。

夜勤明けで疲れているのに、日中に指導のために出勤する。

そんな献身的な努力によって、現場の教育は成り立っているのです。

その中で外国人介護職員には、

・介護技術

・日本の介護文化

・専門用語

・国家試験対策

・生活習慣やマナー

まで教えなければならない場合もあります。

限られた時間の中で、すべてを担当者一人の経験や努力だけに任せることには、どうしても限界があります。

教育担当者が疲弊してしまえば、その施設全体の教育の質が下がってしまいます。

だからこそ、「人」ではなく「仕組み」で支える発想が必要になるのです。

教え方が違えば、学ぶ内容も変わってしまう

介護現場では、経験豊富な職員ほど、それぞれに優れた介助方法や考え方を持っています。

これは介護の大きな財産です。

長年の経験の中で培われた工夫や気配りは、教科書には載っていない貴重な知恵です。

一方で、新人教育という視点で見ると、教える人によって内容や順番が変わってしまうことがあります。

「まずはこちらから覚えよう。」

「いや、このやり方が先だよ。」

「私はこう教わったから、こう教える。」

どちらも間違いではありません。

しかし、新人職員、とくに外国人介護職員にとっては、「何が基本なのか」が分からなくなってしまうことがあります。

昨日Aさんに教わったやり方と、今日Bさんに言われたやり方が違う。

どちらを覚えればよいのか。

そもそも自分はどちらが正しいのかを判断できるほど経験がない。

そうした混乱が、学ぶ意欲を下げてしまうこともあるのです。

だからこそ、最初に共通の教材や共通の手順を持つことが重要になります。

教育担当者が変わっても、学ぶ内容は変わらない。

基本を統一したうえで、そこに各職員の応用や工夫が加わっていく。

これが教育を「仕組み化」する第一歩ではないでしょうか。

この課題は、日本人職員にも共通しています

今回の調査は外国人介護人材を対象としたものですが、読み進めるうちに私たちはあることを感じました。

これは本当に外国人だけの課題なのでしょうか。

日本人の新人職員でも、

「何を優先して覚えればよいか分からない。」

「指導する人によって教え方が違う。」

「実技をもう一度確認したい。」

「聞きたいことがあるけれど、誰に聞けばよいか分からない。」

という声は決して珍しくありません。

介護未経験で入職した人にとって、現場は初めて目にすることばかりです。

先輩の背中を見ながら覚える。

分からないことは聞いて覚える。

そうした従来のOJTだけでは、覚えるスピードにも限界があります。

外国人介護人材は、日本語という壁があるため、その課題がより分かりやすく表れているだけなのかもしれません。

日本人にも同じ悩みはあるけれど、なんとなく空気を読んで乗り越えている。

そんな側面もあるのではないでしょうか。

つまり、外国人教育を考えることは、日本の介護教育全体を見直すことにもつながるのです。

外国人職員が理解しやすい教材は、日本人の新人にとっても分かりやすい教材になります。

動画は、「教える人」のための教材でもあります

動画教材というと、「外国人が見る教材」というイメージを持たれることがあります。

しかし、私たちはそうは考えていません。

動画は、教える人を支える教材でもあります。

教育担当者は、

「今日はここまで説明しよう。」

「実技の前に動画を見てもらおう。」

「終わった後にもう一度確認してもらおう。」

「分からないところを、次回までに動画で復習してきてもらおう。」

といった形で、教育の流れを組み立てることができます。

説明漏れを減らし、教える内容を統一し、何度でも繰り返し学べる。

動画は教育担当者の代わりにはなりません。

現場での声掛け、利用者の状態に応じた判断、細やかな配慮は、やはり人にしかできないことです。

しかし、動画は教育担当者の負担を軽減し、より質の高い教育を実現するための大切なツールになります。

基本的な手順や知識は動画に任せる。

そのうえで、教育担当者は「なぜそうするのか」「この利用者の場合はどう応用するか」といった、より深い部分の指導に時間をかけられる。

そうした役割分担が可能になります。

私たちが目指しているのは、「教育を仕組みにすること」

私たちは「動画でOJT介護」を制作しています。

しかし、本当に提供したいものは動画そのものではありません。

私たちが目指しているのは、「教育を仕組みにすること」です。

医学・介護の専門家による監修。

介護現場で誤解のない表現。

多言語への適切な翻訳。

現場で本当に役立つ内容の精査。

さらに現在は、多言語字幕だけでなく母国語音声にも取り組み、より理解しやすい教材づくりを進めています。

字幕を追いかけながら映像を見るのは、想像以上に集中力を必要とします。

母国語音声があれば、耳で理解しながら映像に集中できる。

そんな学びの環境を目指しています。

それは外国人介護職員だけのためではありません。

教育担当者が安心して教えられること。

新人職員が安心して学べること。

施設全体で共通した教育ができること。

管理者が教育の進捗を把握できること。

そうした「教育の仕組み」を支えることが、私たちの役割だと考えています。

教育は、人手不足を支える「土台」になる

人手不足だから教育ができない。

それは、多くの介護施設が抱える現実です。

しかし、人手不足だからこそ、一人ひとりの経験や教え方だけに頼る教育には限界があります。

教育が不十分だと、新人職員は自信を持てず、早期離職につながってしまうことがあります。

離職が増えれば、さらに人手不足が深刻化し、残った職員の負担が増える。

そしてまた教育に時間が割けなくなる。

この悪循環を断ち切るためにも、教育の仕組み化が必要なのです。

必要なのは、「教える人」を増やすことだけではありません。

誰が教えても、同じように学べる仕組みをつくること。

新人が安心して定着できる環境を整えること。

それが、これからの介護現場に求められる教育ではないでしょうか。

外国人介護人材の調査から見えてきた課題は、決して外国人だけの問題ではありませんでした。

それは日本の介護教育全体が抱える課題であり、これから介護業界が向き合っていくべき大きなテーマです。

日本人も外国人も、教える人も、学ぶ人も、安心して成長できる環境をつくること。

その積み重ねが、人材の定着につながり、介護の質を高め、利用者へのより良いケアへとつながっていくのだと思います。

教育は、すぐに成果が見えるものではありません。

しかし、確実に施設の未来を支える土台になります。

私たちNAIは、これからも「動画でOJT介護」を通して、介護現場における教育の仕組みづくりを支え続けていきたいと考えています。

参考資料

本記事は、以下の資料を参考に、調査結果の傾向をもとに当社の視点で考察・執筆しています。

公益社団法人 全国老人福祉施設協議会
『令和6年度 外国人介護人材受入れ実態調査報告書』
https://mitte-x-img.istsw.jp/roushikyo/file/attachment/588767/


動画でOJT介護
https://bsp.nai.co.jp/